クライアントと打合せを進める中で、イメージを共有するためにパースを描くことがあります。図面といわれるものは縦横の線だけなので、空間として捉えるのが難しいためです。こちらの意図を伝えたい場合もありますし、勘違いを防ぐ役割もあります。空間が見えることで具体的な良いアイディアが生まれたりもします。
空間として認識してもらう道具に「模型」というものもよく使うので、私は「模型」と「パース」と「素材サンプル」を併用して説明することが多いです。そうすることでなんとなく理解してもらえているように感じています。それでもおそらくは「なんとなくわかったけれど、きっといい感じにしてもらえるだろう」と出来上がりを楽しみにされているようにも感じます。私もその期待?に応えるべくパースを見ながら詳細を決めていきます。
それでも手書きでパースを描いていると、描くことで気付くこともあります。私は建築家の横内敏人先生の描くパースがとても好きで、描き方も似てしまいます(笑)。もちろん先生の描くパースには足元にも及びませんが。以前参加していた設計塾で、横内先生の課題でパースを提出したことがあり、その時に指摘されたことでパースというものの考え方が大きく変わりました。それは「この窓の外に見える隣の家は、こんな見え方をするかな?」ということでした。私は自分の敷地の庭をきれいに見せることばかりを考えて、現実から目を背けていたことを指摘されました。
「パースを描くことで見たくないものにどう対応するかということもよく考えて設計しなくてはいけない。」
この言葉から、パースで描くメインの窓の外に見たくないものを描きたくないので、家を計画する際に周囲の状況を注意深く観察するようになりました。そういう意味でもパースは、私にとっても重要な相棒です。
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