間取りを考える

間取りというと一般的にリビングやダイニング、寝室に子供部屋などの用途に合わせた空間を、住宅という「箱」の中でどう組み合わせているかを指していると思います。「いい間取り」だとか「開放的な間取り」だとかと言われます。戦後に寝食分離から就寝分離に変化していきました。寝食分離とは精神上、あるいは衛生上、食事をする部屋と寝る部屋を分ける間取りのことです。就寝分離とはその後、寝る部屋を個人ごとに分けた間取りのことです。子供部屋を個室化していった流れです。これらの空間的な豊かさは、ある意味では弊害を生み出しました。

子供が部屋で何をしているのかわからないというのもそのひとつだと思います。もちろん子供とはいえプライバシーは必要ですが限定的です。広さや環境はほどほどでいいと思うのです。子供たち自らが不便を工夫するということも大切です。集中して勉強が必要な期間は中学、高校くらいでしょう。小学校の高学年を合わせても10年ほどしかありません。子供のために作った部屋はそのままほぼ物置と変化します。

陽当たりの良い応接間や庭に面した座敷といわれた空間も、今は絶滅危惧種と言っていいでしょう。これらもある意味では一般家庭では利用頻度が低く物置化していった過去があります。

こうなってくるともう、庭に面した明るい部屋を物置に閉ざされながら暮らすことになってしまいます。間取りも個室を集合させて作ってあるので構造はバラバラで、よほど大きな改修をしないと暮らしやすい間取りにはならないことが多いです。そうなると、もういっそのこと建て替えを・・・というのが、日本の住宅の寿命が超短命な理由です。

しかしその一方で、今でも改修して暮らしている長寿命な住宅があります。いわゆる80年以上経っている古民家と言われるものです。これらの建物はなぜ改修して住み続けられるのかと言うと、まず構造が明快です。間取りをある程度は考えていたでしょうけど、構造が単純に組める中で間取りを作っているのです。もちろん温熱環境は劣悪ですし、庭に面したいい場所は客間に占領されているのですが、構造が単純なのと空間も大雑把につなげているので、間取りを組みなおすのも難しくありません。とは言っても、もちろん施工はかなりの手間がかかりますし費用も決して安くはありません。それでも家の歴史を引き継げるという付加価値は大きいでしょう。

話は少しそれましたが、今の暮らしに合わせる間取りを考える時、必要なのはまずは玄関。日本人なら、というか日本の気候の中で暮らすなら靴を脱がなければ清潔には暮らせません。そして調理をし、食事をする場所。便所や洗面、浴室はなくてはならないでしょう。勉強をしたり読書をしたり、あるいはタブレットやゲームなどをするのは、広めのワークルーム的な場所があるといいかもしれません。もはや大画面TVのあるリビングもその存在が危ういように思います。小さな子の昼寝から、デイサービス利用を考える高齢者まで使える部屋がひとつ。それと子供用の寝室と大人用の寝室。まとめて大きくひとつでもいいでしょうし、2階をフルオープンにして家具で仕切って使うようにしてもいいかもしれません。福井のような雨や雪の多い地域はビルトインガレージもいろんな場面で重宝する空間です。そしてこれらの便利な電子機器に囲まれた空間から、本来の人間へリセットするための豊富な緑と空の見える庭が必須です。

現代の人の生活に合わせた居場所をつくり、構造と間取りを同時に明快につくる。そして空と緑を満足に味わえる庭を用意しておく。それが今の間取りを考えるうえで、まず大切なことではないでしょうか。

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