弾丸建築ツアー 長野編

備忘録

奥村まことさん設計の『いわさきちひろ黒姫山荘』を見学したくて長野行きを計画。調べると長野県には気になる建築がいろいろ、、、ただ長野県、、、広すぎる。笑

まずは一番の目的地『黒姫山荘』

山の木々の中に佇むその姿が美しい。ひと目で「素敵だな」と嬉しくなる。急勾配の切妻屋根の中央部を2階にしたシンプルな形。ただ建築当初は4.5寸勾配の方形屋根で、2階は後からちひろさんが増築。そのことで建築の形が変わったことをまことさんは残念がっていたという。1階の間取りは4間角のシンプルな形状ながら、回遊式で使い勝手が良さそうなところ、天井の高さ、建具の高さ、引き戸のおさめ方なども吉村順三イズムを感じる。中に入って誰もいないことをいいことに、ウロウロと何度も建物の中を歩き回る。1階の床の高さの違いも住んだ時の目線の高さを考慮してのことでしょう。立って見学していると気がつかないことも、畳に座ったりソファーに腰掛けてみたりキッチンに立った時の目線を想像してみると、家族の団らんが心地よい空間だったのだろうと思います。移築されてはいますが、建築に対して開口が大きく多いことも、周囲の自然をいかに好んでいたかがわかります。女性が設計しているのにキッチンが意外にも小さいのは、本来はこれくらいの方が使い勝手がいいのかもと思ってみたり。シンプルな建築の骨格の中に必要なものを適正なボリュームでレイアウトし、それぞれが無駄なく回遊できることで大きさ以上に広がりを感じる。動線は建物の中心部に集中させることで、その周囲にコージーなエリアを点在させて暮らしに落ち着きを持たせている。外観も軒先を低く抑え自然に違和感なく佇んでいる。一つ疑問があるとすれば玄関の建具がドアだったこと。多湿な地域のために気密性を優先したのかもしれないけれど、雪国で外開きのドアは積雪時に中から開けられなかったということはなかっただろうか。ただ囲いを設けるなどの配慮があったのかもしれない。奥村まことさん設計の建物は初めて見学できたが、とても良かった。ご主人昭雄さんの住宅もいつか見てみたい。

小布施に向かい中村好文さん設計の飲食店『えんとつ』へ。

お店はまだ営業前だがすでにお客さんが並んでいる。古い建物を改修している店舗だが、外部はほとんど変えていない様子。ただ変えたくなかったのだろうと思うほどの時を経た美しさ。周囲の建物も同じような保存のされ方で街並みとして美しく、観光名所になっている。

少し移動し『松本十帖』という少し変わったネーミングの活動を見学。

いくつもの建物を何人かの建築家がそれぞれの趣向を凝らしながら再生。建物の力を足したり引いたりしながら、今の時代に合わせています。その中でも僕は『松本十帖おやきとコーヒー』という建物にひとめぼれ。街に漂う建物の雰囲気、内部の仕上げ方、家具、レイアウトなどとても素敵で嬉しくなります。もちろんおやきとコーヒーも美味しく、時間がないのに長居したくなる。そしてなんと夜は地域の銭湯になっているとのこと!なんて素晴らしい建築のあり方。調べるこの施設はこのプロジェクト全体のリーダー『自遊人』が設計しているようです。建築家ではないところが再生という魅力を感じます。

『松本十帖』の他の施設で今回訪れたのは『本箱』設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE、選書&ディレクション:BACH 幅允孝、ひらく、『Cafe 哲学と甘いもの。 / Book cafe』設計:スキーマ建築計画、『ALPS BAKERY』など。

松本市内を移動し三谷龍二さんのお店『10cm』は店内にあったオリジナルの薪ストーブのディテールがきれいだったし、中村好文さん設計の『イタリア料理みたに』は営業時間外だったので玄関先だけ覗いたが良い雰囲気だった。柳澤孝彦氏設計の『窪田空穂記念館』は松本市の山並みを連想させる外観とそれを構成する特徴的な構造がそのまま象徴的で力強い建築でした。その向かいに建つ明治8年建築の本棟造りの生家は今見てもとても美しく、地域性や文化を反映させている建築は時を経ても普遍的なのだなと納得。

最後に訪れたのは以前から一度行きたいと思っていた『安曇野ちひろ美術館』。

設計は内藤廣氏で内部に中村好文さんのいろんな椅子があります。内藤さんの建物は構造と形態がシンプルに構成されているように感じます。その構造の見せ方も連続性の美しさを日本的に表現しているような。

どちらも見応え十分で閉館30分前に滑り込みセーフできてとても良かった。

椅子は座るだけではなく見た目にも楽しめる要素が大きいですね。座るために必要な構造を見た目の楽しさや美しさに生かせている家具が良い家具なのかと思ってみたり。

旅先で親切に対応していただいた長野県民のみなさま、ありがとうございました。

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