「風」と「土」

先日、21世紀美術館で行われた「地域と建築展」のシンポジウムの中で思い付いた考えをまとめておきたいと思います。

建築を地域という言葉で考えていくと、それに引っ張られて出てくる言葉に、地域性、気候、風土、環境、歴史、文化などがあげられる。

その地域で育まれた固有の文化はそこに住んでいる人たちにとっては当たり前のこと。それはすごい事でも珍しい事でもない。ただその固有の文化が他には例のないものだと認識されるのは、地域の外からの目線が入った時である。はじめて体験する人にとって、その文化はこの土地にしかないものであり、はじめて体験する人が多ければ多いほど、それはここにしかない文化として認知されていく。

ところで風土という言葉は「風」と「土」であり、「風」は外から吹いてくるもの、「土」はずっとここにあるものという話を聞いたことがある。自分なりに解釈するなら、「風土」とは、外からの目(風)によって、固有の文化(土)が認知されるという意味もあるのではないだろうか。そして新しい風が運んでくる変化によって、そこにある土も少しずつその性質を変えながら、また他にはない独自の変化を進めていく。

日本という国は開国するまでは独自の文化を育んできた。「茶の湯」や「桂離宮」はある意味では日本人にとって当たり前に存在する文化だったのではないだろうか。

そう考えると今の時代はいろんなところから嵐のようにいろんな風が吹き荒れているようだ。その風が文化的で新しい土壌を育んでくれているのならいいのだが、そうでないのなら今一度、昔の土を思い出してみるのもいいのかもしれない。

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