ふくい建築賞2022の公開審査がありました。おかげさまで『浅水の家』が優秀賞をいただくことができました。お施主様をはじめ、建設会社様や職人の皆さんのご協力があっての素晴らしい評価だと思っております。大変ありがとうございました。
以下、今回のプレゼンの一部です
「今回の建設地は昭和後期に山を切り開いて造成された分譲地の一画。東から南に掛けて造成前の雑木林に囲まれた分譲地でも最奥の交通量の無い静かな環境」
「敷地は南側道路で間口約13m、約60坪の土地。東、北、西面共に住宅が迫って建っている状況。この敷地の道路を挟んで南東側に雑木林が広がっているため、その方角に絞って開口を設けている。」
「構造の考え方はいたって単純。屋根を柱が支え、床は梁が支え、荷重が偏らないような構造の形を計画している。そのなかに暮らしの要素を割り振ている。間取りを作り、それに合わせた構造を組むことはしない。」
「それぞれの材料が同じ寸法で成立する構造の考え方なので、材料は小さく、数量は少なく、それでも構造は強く、構造材や断熱の欠損は少ない。材木を無駄使いせずに、将来の間取りの可変性も持ち合わせている。」
「南側道路から見た建物。庭越しにLDKや吹抜けがつながっている。窓際の庭木は冬に落葉するヤマボウシ、道路際は冬でも葉を残す常緑のソヨゴやシラカシをレイアウトしている。」
「アプローチは墨モルタルの左官仕上、外壁は桧の羽目板、玄関建具は桧の格子戸で取手はチーク、ポストもチークで製作。樹々の成長に呼応するように外部の仕上も経年変化する材料や仕上げ方としている。」
「ダイニングキッチンからリビング越しに庭への眺め。家族が集まる朝食の場はできるだけ朝陽が入るように計画する。朝日を浴びるというのは身体にも気持ちにも大切なことだと考えている。」
「2階の読書ホールからリビングの吹抜け越しにもう一つの読書ホールを見る。室内でも同じ階や上下階のつながりを持たせている。いつでも一緒もいいけど、一人で集中できる環境も必要。それでも庭や雑木林がどこからでも眺められる。」
「自分で言うのはおこがましいが、夕景の外観も美しいなと思う。これは構造を単純に組んでいることも大きく影響しているので、機能美ともいえる。交通量がないという立地もあるが、家庭の温かなあかりが街にこぼれるというのは、とても良い事ではないだろうか。」
ちなみにより詳しい写真はgallery『浅水の家』からご覧いただけます
ここからは私の反省も踏まえての備忘録。
・福井という車社会の構造を考えると、駐車の方法にも工夫があると良い
・雨や雪が多いという気候を考えると、玄関の屋根の掛け方に疑問が残る
・良い意味でだが教科書的で全ての要素を素直に満たしている。(個性、特徴がない?)
・全国コンペのミニ版ではなく、福井人による、福井でしかできない建築を期待している
・設計者として距離や寸法をしっかりと説明できることが大切
それと公開審査の感想ですが、住宅部門での最優秀賞の建築はとても素敵だった。立地が目立つ場所ということもあり、竣工当時から通るたびに眺めていたのですが、こういうのが建築家の仕事だなとあらためて感じる。ただ残念だったのは、順番が私の前だったので緊張しいの私はまともに説明を聞けていなかった。それでも設計者の人柄も含めて素敵な建築だった。
もうひとつは、応募件数が少ない。住宅部門は6件しかなかったのだとか。これは応募側だけの問題ではないように感じたのだが。。。賞を狙うことが設計の目的ではないけれど、自分が考えた設計を客観的に評価してもらえることは今後にもつながると思います。
最後にこの賞には施主や施工者も同席し受賞するのですが、施主からは心地よく過ごしているという話を聞けたので、それがとてもありがたいことでした。その言葉を忘れずに、まだまだ精進したいと思います。
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