2022.06.17 多摩川建築塾 堀部安嗣先生

今回の講師は『堀部安嗣建築設計事務所』の堀部安嗣先生です。木造住宅を手掛ける建築家としては、現在日本で最も人気のある建築家のひとりではないでしょうか。もちろんそれには理由がありますし、その理由の根本に迫るお話を聞けたように思います。以下、その備忘録。

お話は『和』というキーワードから始まります。『和』とは日本のことであり、足す、融合、加えるという意味もある。日本はアジアの辺境の地であり何かを生み出すには難しい地域性だったが、あるものを生かすということが得意になっていったという歴史がある。

先生が幼少期を過ごしたはずの場所は今、国道の下になっている。原風景がなくなるということは自分がどこからきたのかわからなくなるということ。都会化していくことは作ることであると同時に、記憶を破壊する行為であるということをしっかりと認識しなければいけない。

原風景の影響はとても大きく、人は体感した空間しか設計できない。心地よい空間を感じなければ、心地よい空間は設計できない。ただ日本に住んでいると日本人は心地よい空間を知らず知らずのうちに体感していたりするのではないか。例えば柱や梁、障子、すだれ、土壁、瓦など。これらのものは暮らしやすい環境を作り出し、人の身の丈に合っていたし、無意識のうちにそれを感じ取っていた。

今の建築は進歩し続けていると思われているのかもしれないが、衰退しているということに気が付かなければいけない。何百年と使える建築を作れたはずなのに、数十年で壊す建築しか作れなくなっているのだから。

スクラップ&ビルドが良しとされた時期があったことも事実。江戸、明治までは緩やかに建築が進んでいた時代だったが、日露戦争で急激に国力が上がり太平洋戦争で一気にどん底へ。その後バブルで復活したが現在は3.11やコロナ等の問題で再びどん底へ。これからは緩やかに身の丈に合った暮らしが続いていくのではないだろうか。

そのためにはパッシブとアクティブをうまく組み合わせていくことが重要。断熱性能や蓄熱性能といった省エネと、太陽光などの創エネを、私利私欲に利用するのではなく、家庭菜園のようにあくまでも自己消費と考えて利用する。

「土地は親から譲り受けたものではなく、孫から借りたもの」というネイティブアメリカンの言葉がある。ツケを次の世代に負わせてはいけないのである。そのために何ができるのかを設計者として考えている。

説得力のあるお話でした。途中私の思いついたことも書き足しているので、もしかしたら先生の意図した内容とずれているところがあるかもしれませんがご了承ください。

建築はその時代を反映しているように思いますが、それは裏を返せば常に時代に流されているということ。その流れに流されないようにするためには、古くから続いているものを理解し、今の暮らしに合わせて仕立て直すという作業も必要。古いモノが必ずしもいいものとは限りませんが、新しいモノもそうとは限らないということ。冒頭で植久塾長が瓦の話をされていましたが、瓦ももう一度見直されるべき素材かもしれません。

目新しい発想や斬新なカタチを生み出すことも挑戦という意味では興味があります。ただ日本人であるなら何百年何千年と続いてきた素材の組み合わせから、新しい様式を考える方が合っているのかもしれません。そしてそれこそが世代を超えてつながっていく新しい『和』のカタチになるとしたら、日本の産業や工芸が再興する時代が来るかもしれませんね。

トップの写真はHPからお借りした、たしか先生の処女作だったと思います。美しいですねぇ。

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