越前瓦の工場見学

瓦ほど地名を冠した建築資材が日本全国にある製品って他にあるでしょうか。福井には越前瓦があります。それほど日本には瓦屋根というものが身近な存在だったのです。ところが街で最近建った住宅に瓦屋根って、ほんと見ることが少ないです。そこで福井で越前瓦を製造している『株式会社 越前セラミカ』さんに見学に行ってきました。

当日は会長自ら応対してくださいました。予約の段階で建築士という事を伝えてあったため、資料をファイリングしたものまで用意されていました。ありがとうございます。まずは事務所で挨拶がてらいろいろとお話を伺いました。とても朗らかな会長さんですが、瓦を取り巻く縮小の波はかなり大きいようです。この10年で出荷量は半分以下にまで減り、今は新築住宅の瓦屋根の割合は1割程度ではないでしょうか。

ではなぜそこまで瓦屋根が敬遠されるようになったのかというと、地震の影響だと言います。大きな地震の度にメディアは「重い瓦屋根が住宅をつぶしている」と叫びます。その度に屋根の瓦は、軽い板金屋根に姿を変えていきました。ただその問題は瓦だけではなく、建物の構造にあります。構造をしっかりと組んでおけば、瓦屋根の恩恵を受けることができます。

また住宅の建築主の年齢の推移もあるように思います。建築主の平均年齢は30代半ばから40代前半。選ばれている住宅はシンプルなデザインでコストを抑えられる仕様。そこには瓦屋根の出番は少なそうです。建築主の低年齢化は住宅価格の低価格化につながりますが、それが住宅の質の低下につながることは避けなければいけません。住宅の質の低下は暮らしの低下であり、室礼や文化がなくなることは日本がなくなっていくことにつながるように感じているからです。ちょっと大げさ(笑)。

そこで瓦屋根の得意分野を見直してみると。とにかく維持が楽。もし割れても部分修理のみ。また過酷な条件下でも品質や性能の低下はありません。酸性雨にも強い。断熱的にも有利で、遮音効果もあります。特に越前瓦は高温の還元焼成で焼き締めているので吸水率が低く、凍害に強いというのも北陸の気候に最適です。ちなみに奈良の飛鳥寺にはいまだに1400年前の瓦が一部ですが敷かれています。

瓦屋根は重さはデメリットのひとつかもしれませんし、もちろん板金屋根の良さもあります。そこは建築に合わせて適材適所がいいと思います。ただ新築物件の1割とは言わずに、もっと瓦屋根の得意分野を生かせる住宅を提案していきたいですね。

暑い中、工場の中を歩いて細かく説明してくださった会長、ありがとうございました。大変勉強になりましたし、住宅を見直すいいきっかけにもなりました。

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