カエルのおうち 磯崎新

先日、建築家の磯崎新さんがプリツカー賞に選ばれました。その磯崎さんの建築が近くの街に建っています。しかも個人住宅が2棟。今回の受賞を記念して1棟が一般公開されることになったので、早速お邪魔することにしました。いづれも福井県勝山市内の市街地に建っていて、今回公開された建物は「中上邸イソザキホール」と名付けられています。ただ外観がカエルの顔のようなので通称「カエルのおうち」と呼ばれています。

この建物は住宅ですが、「夫婦で集めた絵をたくさん飾れるように」との希望からホールが家の中心になっています。玄関を入るとすぐにこのホールが広がり、それぞれの諸室はその周囲につながっています。ホールの吹抜けや2階の空中廊下なども相まって、どこからでもこのホールを垣間見れるようになっています。特徴的なのはどこにいても曲線が感じられるような作りになっていることです。壁や天井が直線や水平、垂直だけで構成されている建築ではありません。これは胎内に包まれる安らぎを意図しているとのことでした。たしかにこの曲線のおかげで光の反射や音の伝わり方も柔らかくなっているように感じます。美術品を展示するための壁と絞り込んだ開口によって、そこから広がる光が曲線の壁で拡散される空間はとても穏やかな雰囲気を持っていました。季節や天候、時間によってもその室内はいろいろな表情を見せてくれそうです。

今回訪れて考えたのはその建物の持つ「器」としての考え方です。この建物は広いホールはあるものの住宅です。でも一般的な住宅の持つカタチではありません。なにが違うのか・・・。一般的な住宅は要望から家のカタチをつくりますが、この建物はカタチのなかに要望を配置しているように見えます。だから建物のカタチが整っています。この建物は美術品をおさめる器なので一般の住宅からするとやや造形が突出しているようにも感じます。ただ一般の住宅であってもその人の生活に合わせ、大き過ぎず小さ過ぎず使い勝手の良い美しい器でありたいなと改めて感じました。

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