「浅水の家」 始まります

30代の家族が暮らすための家。敷地は間口約13m、奥行き約16mの南道路で、第一種低層住居専用地域という住環境を整えるための制約が一番厳しい用途地域。周囲は住宅に囲まれてはいますが、高台にあり南東には山肌の緑が近くに見えます。この視線を起点として計画をスタート。

施主様からの要望として出た、「本が好きなので子どもたちと読書を楽しみたい」というのも建物のポイントとして特色が出せそうだなと。庭を楽しみたいという要望もあるし、福井の場合は駐車スペースの確保は必須。

私の計画の進め方はまず、周囲の環境を頭の中で眺めながら敷地の分割をします。これを「地割」といいます。駐車スペースをここにして、コノ辺にこれくらいの建物が建つから、ココを庭にしたいなという具合でおおよその配置を決めます。

次に庭に対して家族空間をつなげたいからコノ辺にドンと面積をとって、あとは玄関や水回りの動線を考えるとこんな感じかな・・・と、いろいろなパターンを探ります。階段位置は2階との動線も考えるとコノ辺が水回りが便利だなとか、吹抜けと子供エリアと家族空間がつながっているのは楽しいなとか。さらにそこから山の緑が見えたら気持ちいいなとか、建物に近づけてヤマボウシがあると2階からも花がきれいに見えるななどと生活の場面にまで想いを巡らせます。ただ南面には大きな開口を設けるから構造的にココで処理できるようにしておこうとか、冬の日差しはありがたいけど夏の日射は遮りたいから軒は深くしておこうということも同時に考えていきます。

他にも、大きな開口は温熱的にも不利に働く場合もあるので日射の取れる南面以外はできるだけ風通しの確保できる小さな窓にとどめておこうとか、窓の位置はここでは座った時に高すぎるから子供の目線でも心地いい高さまで下げようとか、天井はココは低すぎずココは高すぎず素材もどんなのにしようかなとか、日の当たる場所で物干しをしても街の人から見えにくい工夫ができないかとか、人の動きに無駄がないかとか、プライバシーが見えすぎていないかとか、屋根に積もった雪が落ちて近隣に迷惑を掛けないかとか、来客時に玄関までにもてなす工夫がつくれるかとか、ダイニングテーブルやソファーに腰掛けたとき庭はどう見えるかとか、逆に待ち行く人から庭越しに建物や室内はどう見えるかとか、駐車位置と玄関の位置関係は使いやすいか、無駄に広く残っている場所や広くほしいのに窮屈そうな場所がないかとか、などなど鉛筆で書いている家の中でまず生活してみます。

そして最後には正面からパッと見て美しい建物に見えているかどうか。間取りが使いやすくても近隣に迷惑をかけるような形やメンテナンスに手のかかる形ではいけないし、外から見て美しくても住む人が使いにくいとかつまらない空間でもいけないわけですから、まずは自分が紙の上で生活してみて「ココに一度住んでみたいな」と思えるまでペンを走らせます。

「浅水の家」も施主様との話し合いの中からヒントがもらえたので、提案はスムーズに受け入れていただけました。

来夏の竣工が楽しみです。

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