2年位前になるだろうか。知人から住宅改修の話をいただいた。ただ話の内容が少し変わっていた。少しではないか、、、かなり特殊案件だった。なにせその建築は世界的建築家 Arata Isozaki の設計だったからだ。初めて建設会社の社長と現地を訪れ、建築の表現力というか存在感に圧倒されたのを思い出す。
経緯は省くとして、設計や施工の時点では僕の手を離れていたが、工事も無事終了したので一緒に見に行きましょうと、その時の建設会社の社長さんが声を掛けてくださった。
一目見て施工がとても頑張ったんだなという事がわかった。初めて訪れた時から圧倒的な建築の表現力の陰で、それを支える部分のメンテナンスの難しさも見えていたからだ。そのことを建設会社の社長は細かく説明してくれた。そして磯崎建築のために、言われていない部分にまで相当手を施しているということも伝わった。建築というのはこういう建築を愛してやまない人たちに育てられているのだ。そう思わせるだけの魅力ある建築ということも言える。
見学させていただいた建物はそのもの自体はほとんど変わってはいない。化粧直しと什器が新しくなった程度だ。ただここを何度か訪れて、無機質な壁に切り抜かれた空と雲を眺めていると、ふとあることに気が付いた。ここには庭はない。周囲の街並みが見える窓もない。見えるのは空と雲だけだ。それもかなり限定的な変わった形の窓のみ。そうか、太陽の動きしか見せない設計なのだ。この開口部の曲線も縦長のスリットも、その周囲を占める大きな壁も、太陽の動きに合わせたものなのか。
ここで暮らす人は太陽の動きに希望を見出すのかもしれない。そんなことに気が付いたら、無機質なこの空間がとても愛情に満ちた空間に思えてきた。
この建物は今後、店舗『nimbus(ニンバス)』として運営されていくとのこと。機会があればぜひ訪れてみてください。
この記事へのコメントはありません。