住宅を設計する際には、小さくてもいいので畳の部屋とそこに床の間を設えたいと考えています。そこには日本人のエキスが凝縮されているように思うのです。
畳の部屋に床の間があると、そこになにかを飾ろうという気になります。そこで季節感のある花を生けたり、心に響いた軸を掛けたりと、知らず知らずのうちに美しいものに目が向かうようになります。また床の間があることで来客時に上座や下座という配慮もするようになります。これは謙虚さやもてなしの心を育む場になります。このように人に対してもモノに対しても敬愛の心で接してきた日本人らしさが、床の間があることで存続していくような気がするのです。
もちろん日本人らしさは床の間で育むものばかりではありませんし、床の間では育めない要素もあるでしょう。また床の間を作るくらいなら他の部屋を広げたいという気持ちもあるでしょう。あるいはそんな堅苦しいことを言わずに、畳でゴロゴロしたいとか、洗濯物を片付けたいとか、日常でも畳が重宝される場面もあるでしょう。
床の間は特別に設えなければいけない場所ではないのです。ただ柱1本と板一枚を置く場を決めて、そこを床の間とすればいいのです。その場を設計者としてはできるだけ提供していきたいと思っています。
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