仕事とは問題を解決すること

以前、本かなにかで仕事の最も大切なことのひとつは「問題を解決すること」と読んだ記憶がある。暮らしを形作る設計という仕事の中で、自分に解決できそうな、あるいは考えなければいけない問題とはなんだろうと。

実務で直面する問題は多岐にわたる。耐震的なこと、断熱的なこと、コストのこと、材料のこと、環境のこと。。。そして問題は複雑に絡み合っていて、なにかを解決しようとすれば他の問題が発生する。たとえば断熱を優先して開口を小さくすれば風通しや陽当りが悪くなってしまうという感じで。全てを網羅することはできないし、最終的には設計者がなにを優先するのかにゆだねられてしまうのかもしれない。自分が暮らしで最も優先することはなんだろうとあらためて考えてみる。世間一般的にはハウスメーカーや地域工務店が注力するいわゆる「省エネ」といわれる内容が今は最重要とされているように感じるが、自分はそれが『最』重要ではない。

やっぱり自分が作るのは「自然と共生する暮らし」だ。そもそも自然は動かせないのだから、動かせないことを前提に考えた方が素直だ。太陽を西から昇らせることはできないし、水を上に流すこともできない。もちろん「省エネ」は重要だしできる限りの対策を施してはいるが、それよりも自然を受け入れて暮らしたい。陽に触れていたいし、樹を感じていたいし、水を聴いていたい。五感のうち、常に3つくらいは自然を感じ取れるような暮らしがつくりたい。それが人を健康にし、結果的に地球にも優しくなれるんじゃないかなと思う。人が主語になり過ぎると、結果もすべて人にしか影響しない。人と自然のこと両方を考えながら設計するのが、地球で暮らす人の責任なのではないかと思う。「高気密だ」「高断熱だ」とばかり声をあげているのは、宇宙にでも住むことを前提にしているのかと思ってしまう。「エコ」とか「省エネ」とかいう言葉をカタログから選ぶのではなく、水が濁らない素材とは何か、空気を汚さないのはどんな材料か、機械の依存を軽減できる工夫、そういうところから暮らしを設計していきたいなと思う。もちろん全てではなくても、小さなことからでもコツコツと。それがいろんな生物に優しく、その結果、人にも心地よい世界になればいいなと思う。

自分一人でできることなど知れているのだけど、少しづつ共感してくれる人が増えてきている実感がある。大きな問題を解決するのは容易ではないけど自分なりの考え方で解決策を講じながら、それに向かう人達と歩んでいきたいなと思う。

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