仕事のつながりからいわさきちひろに関することに興味を持ち、1冊の本を借りてきました。作者の松本猛さんはいわさきちひろ、松本善明の長男で、ちひろ美術館や安曇野ちひろ美術館の設立に尽力された方です。そのなかでも安曇野ちひろ美術館設立の様子を綴ったのがこの本です。
目次は大きく4章に分かれていて、その第1章にまず惹かれました。
- 絵はみなくてもいい
その内容が実に心地のいいものでした。私は美術館というとなんとなく背筋を正し、気持ちも張り詰めて、どこか緊張しながら作品と向き合っていました。その作品の背景や表現やらを自分なりに理解したいと思いながら見ていました。美術というのはそういう見方ももちろんあるのですが、第1章はそのことよりももっと大きな目線で美術館をつくりたいという作者の想いが伝わってきます。それはいわさきちひろという作者や作品の個性によるところも大きいとは思いますが、美術館という敷居は随分と入りやすく感じられました。
美術館の設計者は内藤廣さんです。最近は地元福井でも年縞博物館やローカル線の駅舎の設計をされています。本の中で内藤さんは、
「建てた瞬間がいちばん美しい建築をつくりたいとは思わない。建物は人の一生をはるかに超えて存在し、使われつづけることによって、何かを生み出すものだ。崩れ落ちる寸前がもっとも美しい建物をつくってみたい」
とインタビューに答えたと書いてありました。この言葉から哲学を感じたと作者も書いています。建築に携わるものとしては、こういう言葉はとても刺激的でもあり、身の引き締まる思いでもあります。
ちなみに福井県越前市に「ちひろの生まれた家」記念館という建物があります。小さな建物ですが気になる方はこちらも立ち寄ってみてください。
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