眼を養うとは

本棚の整理をしていたら、2~3年前に訪れた建築物の小冊子がまとまって出てきました。その中でも「聴竹居」「四君子苑」「林芙美子記念館」はとても記憶に残っています。

聴竹居は過去に3度訪問しています。竹中工務店に在籍していた藤井厚二の自邸です。最近、竹中工務店が取得し国の重要文化財に指定されたことでも話題になりました。ここは何度見ても新たな発見があり、90年を経て評価されるというのはやはり建築と生活を考え抜いた結果なのではないかと思います。

四君子苑は2度訪問しています。1年のうちに特定の週だけ特別公開しているので、ピンポイントで狙わないとお目にかかれません。ただそこは苦労してでも行く価値が十分にあると私は思っています。北村捨次郎棟梁の数寄屋建築と吉田五十八設計の増築部を楽しめるのですから。どちらも非常に魅力的な部分が多く、細かいところまで解説をしてもらいながら見学していると思わず時間を忘れてしまいます。

林芙美子記念館は山口文象設計。「日本の木造住宅はこうですよね」と言いたくなるような雰囲気。真壁の平屋で軒が深く、居室が広い庭に開放されているので明るく、南の庭と北の開口も風が抜けて、どこにいても清々しい建物です。どこに腰掛けてもいろんな景色を楽しめそうだな思った記憶があります。ただここは基本的に室内には入れないので、庭から屋内を見学するだけですが。それでも庭に対して非常に開放的なので、庭からでも生活の様子はとてもよく想像できます。

こういう建物を見学してそのまま実際の仕事に生かせることは稀です。ただ、空間に身を置いて心地いいと感じる寸法を知ったり、空間に対する開口の明るさの感覚を養ったり、質感や高さと幅の関係など、宮脇檀の言う「眼を養う」ということはこういうことではないかと思っています。

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