庭NIWA240

季刊誌「庭NIWA」が届きました。特集は”ホテル・旅館の庭”です。写真がとても美しく、どこも訪れてみたいと思わせるお庭や建物ばかりですね。

ただ今回の雑誌の中で一番考えさせられたのは、”コロナ禍に想うこと”というアンケートに庭師さんたちが答えた内容でした。

アンケートに答えた庭師さんの話の中に、「最近、庭の剪定をしていると切った枝葉を「持って帰っていいですか?」と通行人によく声を掛けられます。」という話が載っていました。きっと枝葉を持ち帰りたいと思った通行人の家には庭がないのでしょう。それでもこれまでは公園に出かけたり、観光地を訪れたりすることで、無意識のうちに心身の緊張をほぐしていたのかもしれません。そういう自然との触れ合いを、突然切り離して生活しなければいけなくなった人の暮らしは、捨ててしまうような小さな枝葉にさえ心の拠りどころを求めたのかもしれませんね。

そう考えると、キャンプなどのアウトドアも裏を返せば日頃の自然不足を解消するための行動とも言えます。通勤では一度も土の上を歩くことも無く、会社の中にも緑は無く、家に帰っても小さな窓から隣の家の壁だけを見る暮らし。それじゃたまには自然の中に身を投げ出して思い切り深呼吸したい気持ちにもなりますよね。

新型ウイルスをどうするかというのは医療の専門の方にお願いするしかないんですが、自然を取り込んで日頃どう暮らすのが健康的なのかということは家を設計する立場の人が提案していかなければいけないと思うんです。そこで大切なのはやはり全体の平面計画だと考えています。それは部屋の配置のことではなくて、気候や周囲の環境までを見越した建物も庭もすべて含めた敷地全体の平面計画です。敷地一杯に建物を建てることよりも、部屋や建物を小さくまとめて、小さくても庭という空間を設ける方がどんなに暮らしが豊かになるだろうと思うのです。

「庭」はもっとも大切な部屋のひとつだと、私は考えています。

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