床材の経年美

木材の経年美のひとつとして「艶」というものがあると思います。使い続けるうちに表面が磨かれ、適度な光沢が出てくる様子といえばいいでしょうか。自宅の床には栗の15mm厚のフローリングに自然系ワックスを塗布してあります。ただもう6年くらい経つのでそのワックスの効果はなくなっているかもしれません。ですが新築当初から約6年の間に表面は明らかに艶っ気が増しています。

当初はもっとマットな感じでした。無垢の床材ですしその良さを優先したかったので、ウレタンなどの表面にコーティングを施すようなことはせずに、汚れたとしても素材そのものの質感や肌触りを大切にしたいと考えました。冬でも表面をなでると「サラサラ」とした感じで、ウレタン塗装のような「ペタッ」とか「ヒヤッ」とかいう感じではありませんでした。しかし最近では「ペタッ」とか「ヒヤッ」とかいう感触はもちろんないのですが、「サラサラ」という感じともまた違い、言葉では表現が難しいですがあえていうと「しとっ」とした感じとでもいいますか、なんだか徐々に肌になじむような感触に近づいてきたように感じます。もちろん汚れや傷もありますが、それらもこの質感に一役買っているようにも思えます。

改装の依頼や建替えの現場調査などで築30年を過ぎた住宅に伺う機会があります。そのたびに合板に木目をプリントして固い塗膜でコーティングをした建材品のフローリングの哀れな姿を目にします。新築してしばらくは無垢のフローリングよりも掃除もしやすく、ツルツルピカピカで美しく感じられたと思うのです。ただ年月が経てば見た目も性能も劣化し、そこに経年美という価値はありません。その後は残念な末路しかありません。

無垢の材料も比較的求めやすい価格のモノもあります。全てにおいて万能なわけではありませんが、無垢の床を味わってもらうと、その心地よさはわかってもらえると思います。ぜひおすすめします。

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