『日本人はどう住まうべきか?』養老孟司 隈研吾

魅力的なタイトルと対談者に、図書館ですかさず手に取りました。

そして最後の最後にこのお二人がどうまとめたかというと、

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隈 どこでだって、どうでも住めると思っています 笑

養老 そうでしょう!

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なんか嬉しくなる結論でした 笑

このまとめは冗談のようにも聞こえますが、どこでどう住むかというのが人間の経験と知恵が試されるわけで、現在の人間は判断を誤るような生き方をしているんじゃないの?ということかもしれません。

それでももちろん結論に至るまでには、さまざまな出来事について真面目に語り合っています。

その中でも気になった話題を備忘録

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養老 建築ってロケーションが大事でしょう。

隈 ロケーションで8割ぐらい決まります。建築家がやれることなんか限られているんです。ロケーションが恵まれていたら、だいたい勝ったも同然です。ダメな建築家が素晴らしい与条件をめちゃめちゃにすることは山ほどあるけど、与条件をプラスにできる幅はちょっとしかない。

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養老 現代人は感覚が鈍いですから。自分の感覚が鈍いということに気が付かないぐらい、鈍いんです。だから、身体が感受している情報を、意識の方が無視してコンピューターを信用したりするんだよね。それは大きく言うと、この社会を覆う「システム問題」と一緒です。あるものを形作る非常に複雑な要素を、頭が無視してる。身体と意識の乖離は、医者をやっているとよく分かりますよ。死にそうになっていたって、気が付かない人がいるんだから。てめえの具合が悪いというのにね。

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隈 アメリカでは超高層ビルの足元に花屋さんがよくあるんです。家賃をものすごく安く抑えて、1階に入ってきてもらうわけです。つまり、花屋さんは植木、並木と同じなんだ、という考え方ですね。並木から家賃を取る奴はいないだろうということで 笑

養老 確実に花を飾ってくれて、しかも自分でメンテナンスもしてくれるんでしょう。そんなにいい並木はないよね。

隈 要するに人間付き緑地ですよね。で、アメリカ人はコーヒーショップも同じように考えるんです。コーヒーショップは街に楽しい雰囲気を作ってくれるんだから、家賃を取っちゃダメだ、と。実際に、そういう店を低層部にうまく配置するだけで、街全体のイメージはガラッと変わります。

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隈 建築業界は、実は流通ビジネスそのものになってしまっているから、それはエラいことになりますよ。

養老 流通業はコンビニも、宅配便も、オイルショックを脱した後にできた商売なんです。次にオイルショックのような国際的な経済危機が訪れたら、それらがどうなるかわからないですね。それ以前に、東日本大震災でみんな肌身に染みたけど、流通依存というのは現代社会のもろさそのものですよ。流通ってそれほど難しい問題だもの。僕たちがいるようなこんな都市は、石油が切れたら維持できません。まず真っ先に物流問題が起きるもの。

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「だましだまし」という言葉がよくでてきますが、自分がなんでも操作できると思わないようにしたいですね。それがいちばん身の丈に合った住まい方ができそうです。

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